2023.09.16
こんな場合は、遺言書を書いた方が良いかもしれません
自筆証書遺言書の保管制度が始まり、
よく遺言書を作成することを勧めるポスターなどを見かけることが多くなってきました。
しかし、自筆証書遺言書の申請は年間 16,802件、公正証書遺言書の作成は111,977件(令和4年度)と、
まだ一般的とは言えません。
これは、遺言書は富裕層が書くものだと思っているからのが原因かもしれません。
確かに、その通りかもしれませんが、次の場合でも遺言書を書いた方が良いかもしれませんよ。
1.相続財産に不動産がある
2.夫婦間に子供がいない、または独身である
3.事実婚である
4.再婚していて、今の配偶者と離婚した配偶者それぞれに子供がいる
5.会社経営をしていて、株式は後継者に相続させる
6.介護をしてくれた人に、財産を遺したい
まず、相続財産に不動産がある場合です。
不動産は、現金や預金のように簡単に分割することができません。
中には、不動産がいくつかあるので、それを子供達にそれぞれ遺していく、という方もいますが、
その不動産が同じ価値で相続人が平等に分割できるとは限りません。
なぜなら、その土地の所在地や土地面積、建物の築年数、賃貸用の場合には家賃収入など
その不動産の条件は異なりますから、その価値は当然のように差が出てきます。
また、不動産は管理が大変だから、それよりも現金が欲しい、という相続人もいることもあります。
特に、不動産が、ご自宅のみの場合は、遺言書を書くことをお勧めします。
私が担当した案件で、お父様は既にお亡くなりっており、被相続人がお母様で、相続人は子供2人の
相続が発生しました。
晩年、お母様の介護は、一緒に住んでいたご長男夫婦がしており、とても感謝の言葉を口にしていました。
しかし、遺言書を作成いなかったのです。
昔なら、介護もして最後まで看取った ご長男がご自宅を相続するのが当たり前でした。
もしかしたら、亡くなったお母様も当たり前と思って、遺言書を作成しなかったのかもしれません。
ただ、現在は相続人は、平等に法定相続分を相続する権利があります。
そして、次男は、当然のように自分の権利を主張してきます。
せめて、相続財産のうち預貯金が多ければ、ご自宅は長男、預貯金は次男とできたのでしょうが、
残念ながら、預貯金は少なく、主な財産はご自宅でした。
結局、依頼人であるご長男は、ご自宅は売却して、その売却代金を次男と半分半分にしました。
依頼人であるご長男は、長年、住み慣れた我が家に住み続けることができなく悲しい気持ちと
ご長男の奥様も、亡くなったお母様の介護を甲斐甲斐しくしてきたのに、
それが報われなかったような気がして落ち込んでいました。
それに加え、不動産の売却代金から経費や相続税、譲渡所得税を差し引いた金額では、
地元で新居を購入する資金が足りませんでした。
そのため、ちょうど定年を迎えたということもあり、もう少し安く物件を購入できる郊外へ移り住んでいきました。
これは、特別なことではなく、よくある話と言えると思います。
また、再婚で、元の妻(夫)と今の妻(夫)の間に、それぞれ子供がいる場合にも遺言書を書くお客様もいます。
こちらは、再婚したら、前の配偶者との間の子供が会ってくれなくなって、長年音信不通の場合や
今の妻(夫)との子供の方が、年老いた自分の世話をよくしてくれるので、多く遺してあげたい、など
の理由でということで依頼を受けることができます。
また、最近、結婚していても子供がいなかったり、事実婚の方からの依頼も増えてきました。
まず、結婚していても子供がいない場合、配偶者が相続財産の全てを相続することができません。
配偶者の他に、被相続人の親や兄弟がいると、その人達も相続人になり相続権が発生します。
また、事実婚の場合には、そもそもパートナーには相続権がありません。
せっかく、長年連れ添ったパートナーに財産を遺したい場合には、遺言書の作成をお勧めします。
とは言え、被相続人に親がいる場合は、親の遺留分も考慮して、遺言書を作成する必要があります。
その他、会社経営者の方も遺言書の作成は有効です。
主な相続財産が自社株式の場合、後継者は株式を相続しますが、後継者以外の相続人が相続できる財産がありません。
その場合には、遺言書のほかに生前対策が必要になってきます。
特に、事業承継の場合は、1年や2年で出来るものではありませんから、5年、10年と長期間を見据えています。
遺言書は、富裕層や税金対策だけで作成するものではなく、
自分が亡くなったあと、相続がスムーズに行えるように事前に準備をするためには必要なものです。
私には、必要ないとは思わず、一度、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。